ゲームである奇跡、ゲームである悲劇 - ロストカラーズレビュー -


『ロストカラーズ/限定再装版』
レビューを書く前に、このゲームをインストールしたフォルダの更新日時を見てみました。
昨年の9月。クリアしたのは3月末だったので約半年、このゲームのクリアに時間がかかったことになります。他のものでもこのぐらい時間のかかるものはもちろんあります。テキストの量が多かったり、途中で読み進めるのに飽きてきたり、優先順位の高いゲームが出来てしまったり理由は様々です。
しかしロスカラでは違いました。純粋に、ゲームとして前に進めることが出来なかったのです。

物語が進むことの喜び

いやはやクリアするまでに何度ディスプレイを叩き壊したくなったことか。
詰まるんですよ。とにかく詰まる。何をやっても同じテキストがループするばかり。
なんだよこの糞ゲー、どうしろと。何がしたいんだと。もう知らねえYO!と思って投げたあとでそしてどう進めるべきか分かったときのあの快感。そんなのありかよ!とか、なんでこんなことに気づかねえんだよという自分への怒り。
もうたまらんです。楽しすぎです。ドMです。

読むゲーム、聞くゲーム、見るゲーム、そして解くゲーム

驚きました。
テキスト型のADVがここまでゲームっぽくなるんだということに。
もちろんエロゲの中にもゲーム要素が強いと言われるものもありますがその大半は中にRPGSRPGSTGをそのままはめ込んでいるだけです。ありがちな2、3個の選択肢の中からの単純な選択によって話を進めていくことがゲームになっているのか?という話は散々議論されていますが個人的にはねーよwと思います。
どれを選んでも攻略対象が変わるだけなんて、ねえ?
本作はADVの中に見事にゲームとしての要素が溶け込んでいます。読んでいないと、見ていないと、聞いていないとクリアできません。ADVの要素をフル活用して、ゲームとして作品を構築しています。
個人的にはこのソフトハウスの作品を進めるためには「ANOS脳」とでも言うべき特殊な思考回路が必要だと思います。何が物語の鍵になるか?最初は、というか最後までいや、わかんねえって、そりゃねえってって感じです。
頭を切り替えましょう。今までプレイしたどんなゲームとも違うはずです。

ゲームである悲劇

ロストカラーズは物語としても素晴らしいです。あのすば*1からの流れを含め、ループものに対する書き手としての悩みとか、試行錯誤とかが見えてとても面白い。所謂ループものを語る上で欠かすことの出来ない作品と思います。
しかし、キャラクターがどうとか、物語がどうとか、単純にストーリーテラーとしてエロゲを見ている人にとって本作はもしかしたら耐え難いものなのかもしれません。
クリックするだけでは、ページをめくるだけでは話が進まない物語に対して皆様はどう思われるのでしょうか?
中々受け入れてもらえないような気がしています。

エロゲ、読んでますか?見てますか?聞いてますか?

このゲーム、我々のADVに対する取り組み方*2が試されているのだと勝手に思っています。
普段どのようにテキストを読み、立ち絵の変化を楽しみ、音楽の変化に対して作り手の意図どうを考えるか等々・・・・
プレイした方に聞いてみるとなるほどなと思うのです。
普段エロゲの感想など話してみてもこの人はよく読んでるなあという人はやはり詰まる回数が少ないように思います。エロゲというメディアに含まれる要素を最大限まで楽しんでいるのでしょう。ちなみに私は詰まりまくってました。ええ、流し読みばっかりですよ。そうですよ。


このゲーム、全エロゲーマー*3に薦めます。価値観が変わると思います。
是非プレイしてみてください。自力で進めてください。そして悩んでください。
クリックしてれば終わるはずのテキスト型のADVで「詰まる」というおそらく大半の人にとっては経験の無いであろう苦しみをtwitterにでもなんでも、垂れ流してください。
私はただその様子を、ヒントを小出しにしながらニヤニヤして見ていますので。

もし、何か起こって困ったり、迷ったり、怒ったりした事があったら、出来れば思い出して欲しいんです。
目的を達成する為の過程にも意外と価値があるんだって事を。
そしてそれは最初の目的より価値が出ることも有るんだってことを。
自分が当然だと思っていた価値観は、ちょっと視点を変えるだけで変わることもあるんだって事を。


ロストカラーズ作中より

*1:あの素晴らしいを もう一度。自転車操業から2000年発売。

*2:エロゲごときに大げさですが。

*3:はっ!そういえばロスカラ、エロシーンが無かったぞ。バグ発見!そうだな・・・ANOSの結界に働く矯正力で (以下自粛。)